ここ数年だろうか、施工の質が下がったと言われる。
確かに感じることでもある。
バブルが弾け、リーマンショックから新入社員が入らず、数年~十数年の次世代継承が途切れた。
設計もそうだし、実際に施工する職人たちも年配の方が増えた。
最近は若い人たちも少しだけ増えてきたが、これから育てるにも数年かかるし、有能な技術員たちもリタイアする。
本当に建設業界あげて人を育てていかなければならない。
建設業は経験産業と言われる。
いかに失敗をして次は同じ失敗しないと念じながら仕事をしている。
製造業はマニュアルがあり、工場という屋根の元、同じ条件で製造できれば、質の高い物が多く作れる。
建築はプレハブでなければ、一品一品の製作物で、ここが技術者としての腕の見せ所である。
ということは、会社としての土壌はあるとしても、そこに関与する技術者一人一人の経験や意識の高さが建築物の質を決めるといってもいい。
多くの人たちの時間を費やす建築物で、本当に恵まれた人員配置が施主としても望まれる。
しかし、人がいないのです。
経験豊富な、意識の高い人たち。
少しは目をつむっても若い人たちを育てないといけません。
私が若かったころはバブルが弾けてはいたが、まだストックとしてあったので近い年齢の先輩たちもおり、教えていただいた。
何とか育てていただいた。
これからは若い人を育てようと思うが、我々の常識と若い人の常識の違いに、意図を伝えようとしても伝わらない。
すぐ答えを求める傾向にある。
私の先輩が言った言葉に「俺は教えない。見て盗め!」と言われたのを思い出す。
結局は自分で意識して考えないと、また同じこと(過ち)を繰り返すということだろう。
道のりは長い。
建設業界もセオリーのようなものはあるが、マニュアルというものが少ないように感じる。
私の新入社員のことは会社からマニュアルを何十冊ともらって都度見返したものだが、これはゼネコンにより無いところもある。
これは一社に終身、勤めていたらわからない。
派遣として複数社を経験した人しかわからない。
会社としてマニュアルがなければ、会社としての共通したルールがなく、要は技術者個人の力量で、その建築物の完成が決まる。
残念な所だと思う。
施主としては「御社の技術マニュアルはありますか?」と尋ねてみるとよい。
また意識が高い技術員は、書店で数千、数万円する建設書を買って自分のものとしているはずだと思う。
最近はネットで検索もありだが、ネット情報がすべて正しいとは言えない。
最近の施主は自分で建築の勉強をして、色々と物言う施主もいるが、やはり餅は餅屋、しっかりと信頼できる建築技術を持った経験豊富な人(設計は建築士、施工は施工管理技士だろうか。同じ資格者でも得意とする分野があり、木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造等で注意を要するのだが)にアドバイスをもらうほうがよい。
~若い人を育てるとは、通常仕事をしていることに上乗せして人を教育するという心身ともに疲れることを感じて~