工事監理という仕事 その3

工事監理という仕事 その3

(3)施工を取り巻く状況

工事監理を機能させることは施工会社をけん制する意味で重要であることが分かっていただけたと思います。

ここでは施工側が不良工事を出す要因を考えてみたいと思います。私も施工会社に在籍していましたので欠陥を出す可能性というのはよく分かっているつもりです。施工会社、特に大手の会社ほど自分のところの社員が直接、施工はしません。下請け会社に依頼するわけです。この下請けには「1次」「2次」「3次」と重層に連なることが多く、元請けも実際に施工する会社が、どのような会社かを把握することに苦労します。(下請負契約には「1次下請け会社」から「〇次下請け会社」かは安全衛生法により決まった書類を提出させることになています。数次下になると「指示等」は元請けから下へ順次、「書類等」は下から順次元請けへ経ていき時間がかかります。)この構造が品質を低下させる要因の一つと思います。例えば元請社員が施工する職人を指導監督するのですが、現場を掛け持ちで非常駐ならいかがでしょうか。信頼度の高い施工会社でも「時の条件」(建築では年度末や半期末に完成させることが多く(決算の関係)、工程的に同じ業種の仕事が同じ時期に重なることが多く、職人の取り合いになります。)によっては不良工事をしてしまう潜在的可能性は十分あると思います。建築には多くの人の出入りがありますし、工程の厳守は絶対です。工程を厳守するあまり工事の品質は「なあなあ」になりやすい状況です。では、どうするればよいでしょうか。建築は工種別に積み上げ式の工程です。前工程が終わらないと、次工程に入れないのです。この時にチェックすることが有効であると思います。例えば次工程の会社が前工程をチェックする。「下地が悪い。改善しなければ次工程に入らない。」を徹底させることです。自分たちでチェックすることに甘えが出るようならば、第三者を介入させてチェックすることが必要でしょう。多くの目で注視したほうが不良工事を発見する確率が高くなります。何もなければ、それだけ完成後の品質に安心した住まいを約束されたものとなるでしょう。

では、なぜ「第三者」なのでしょうか。建築業界内では「お金」を握っている人が強いと言われます。建築主を除けば、元請会社が強い関係にあります。下請け会社は元請会社にあまり物を言えない関係です。では、「概念図B」の場合はいかがでしょうか。工務店だけで完結します。メリットとしては合理的で「概念図A」に比べて仕事の重複部分を1社で完結できるのでコストがかからないことです。デメリットは自分自身で工事等をチェックしなければならず、甘くならないでしょうか。建築主は建築に関わりを少なくできる分、何をしているか分からなくなり建築知識が無ければ、施工会社の言いなりとなり易いと思います。あなたはどちらを選択しますか。

(次回に続く)

工事監理という仕事 その2

(2)工事監理の法的な位置付け

建築士法において「工事監理」の定義がなされています。『「工事監理」とは、その者の責任において、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかを確認することをいう』となっています。

同じく建築士法において『「工事監理の業務執行」で、建築士は工事監理を行う場合において、工事が設計図書のとおりに実施されていないと認めるときは、直ちに、工事施工者に注意を与え、工事施工者がこれに従わないときは、その旨を建築主に報告しなければならない』となっています。

よって工事監理者は建築関連の法規においては建築主に報告するだけで直接の権限がないことになっています。では工事監理者は品質管理ができないのでしょうか。人は人から見られていないとなれば楽な方向へ流されることは、大方の人がその意見に納得いただけると思います。よって工事監理者が現場に出向いていく回数が多いほど品質が向上するのではないでしょうか。ただし、直接的な品質管理の責任は工事施工者にあることは一般的です。

設計事務所にも品質管理について問題があります。最近は工事監理に、あまり重きを置かず、設計のみに重点を置いた考えとなっているのではないかと思います。最近のデフレにより建築士の報酬は「建設省告示第1206号」(現在は平成21年に、現在の業務報酬基準(H21国土交通省告示第15号)に変更)を無視したダンピングによるダンピングにより設計に傾いた仕事になっているのではないかと思います。工事監理は、そこそこに設計で食べていけばよいという考えなのでしょうか。こうなれば工事監理に身が入らないのも、うなずけるというものでしょう。

ここでは個人又は小規模で士業を営んでいる方たちの収入を考えてみます。士業は資格を持った人が動かなければ収入を生み出さないシステム、人力に頼る商売であると思います。物を売る商売であれば販売ルートが確立されると本人が動かなくても収入は入ってきます。難関である国家資格の建築士(医師、弁護士、建築士と人間の生命財産を守る職業)という資格を取得しても大方の設計事務所は収入は低い状況です。24時間働いてもやりがいがなくなってきているのは、どの業種の仕事も同じだろうと思いますが、競争社会では仕方ないことです。しかし、人の生命財産を預かる仕事に、ご理解をいただければと思います。

話を元に戻します。建築の品質管理による欠陥において昨今の司法の考えは刑事事件ではなく、民事事件として法規が適用され民事裁判を切り口に建築法規の法違反に繋げていく裁判となっています。ですから今後の建築業界は建築法規のみを守ればよいという概念を捨て、当たり前である全ての法律を遵守する(コンプライアンス)精神を持たなければなりません。これは建築主自身が建築に注目し、適正な工事を求める意思を持たなければ工事監理者自身の存在が無いに等しいと言えます。建築主は人任せにせず専門家の助言により建築主自身が行動を起こさなければ意味を持たないことになります。一生に一度あるかないかの我が家の建築を建築主が主体となって参加する気構えが必要だと思います。

ここで、建築に関する裁判は最近増加しております。10年前まで(現在から12~3年前の10年前で22~3年前)は建築工事において近隣との関係に関する案件が多数を占めていたようですが、最近は建築の性能に関することが多いようです。建築業界を擁護するという訳ではないのですが建築業界はまだまだ建築以外の法規に疎く裁判に慣れていないので、その分建築主が我慢していたのだと思っています。裁判にかかわる裁判官や弁護士にも建築に不勉強な部分があるのも否めなく、判決が建築業界にいる人たちには?と思ってしまう判決があるようです。仕様書に謳われていても現場サイドでは、これは明らかに守れない状況もあり、設計者側がもっと現場を知ってほしいと思っています。紙の上ではどうとでも書けます。工事仕様書が全てではなく技術的見地から多少幅を持たせた表現にしてほしいと思っています。要は設計図書には、その現場独自の工事仕様としたものとし、仕様書そのまま使わないでほしいと思います。建築業界では暗黙の了解も建築主は契約書類が全てであり、第三者が見ても分かりやすい表現を心がけるべきだと思っています。

(次回に続く)

工事監理という仕事 その1

工事監理と工事管理は違う。

 

工事管理は施工管理でいわゆる現場監督が行う管理で、工事監理は設計監理でいわゆる設計者が設計図書どおりに施工されているかをチェックする監理です。

もう12~3年くらい前か、工事監理を主業務として特に第三者として第三者監理を業務として自分で建築士事務所を構えていたことがありました。

 

その時に『第三者的工事監理の必要性』(建築の取り巻く状況)という小冊子を発行してまして、今回ふとその冊子が出てきたので、ご披露させていただこうと思います。多少手を加えさせてもらいます。

 

第三者的工事監理の必要性

(1)建築業界の仕組みからの第三者的工事監理の必要性

建物は土地の上に建つことから土地を確保することが先決ですが、ここでは土地を確保した上でのお話です。

建物を建てるわけですが、建築主一人では建物は建ちません。(お一人で知識とやる気で不可能はありませんが、時間があれば別ですが普通はできません。)建築主を頂点に設計・工事監理、施工とそれぞれの専門分野でチームを組むわけです。その専門分野を「設計事務所」が設計・工事監理を、施工会社が施工を分担することが通常の姿ではないかと思います。実際にも大なり小なりこのシステムが機能していると思います。

昔の流れでは棟梁が全て(設計・工事監理、施工)を負っていました。この流れは現在の住宅では「ハウスビルダー」であり、「ゼネコン(セネラルコンストラクター、総合工事業(請負))」の「設計・施工」物件であると思います。しかし技術的進化はあるにしても、今も昔も基本的な姿勢は変わらないはずですが、昨今の建物の欠陥問題が目立ち始めたのは、なぜでしょうか。

あなたは企業が何かしらの欠陥が発生した場合に、その企業が全ての責任を負ってくれるだろうと思っていませんか。

営利を求める企業は世間の風聞に敏感で信用を考えるとなにかしらの対応をするだろうということは一般的な考えであろうと思います。しかし、この前からの耐震偽装の問題(2005年)でもご承知の通り構造の重大な欠陥が発生し建て直しを求めた場合、はたして企業が会社の資力から建て直すことが可能でしょうか。ほとんどの企業は会社の資力の問題から建て直さなくてよければ、建て直さない方向に努力するのではないでしょうか。究極な方法では裁判という選択もありますが、よく聞くと多大な時間を費やし、勝つこともあれば、負けることもあるわけです。ではどうすればよいでしょうか。

建物を建てる最初から設計図書どおりに建てられているか、多くの建築専門家の意見を交えてチェックを機能させ、確認すればよいのです。すなわち欠陥が起こらないように予め建てている段階から保険(第三者的工事監理)をかけることが重要ではないでしょうか。

(次回に続く)

 

住宅の税制

下記のホームページでは「住宅の税制」について住まいにかかわる税金の基礎知識が国土交通省や財務省、一般社団法人、独立行政法人 住宅金融支援機構 等のリンクが貼られているページを発見しました。

 「住まいの情報発信局」ホームページです。

http://www.sumai-info.jp/column07/index.html

結構、まとまってリンクが貼られていますので、大変便利だと思います。

建設業界(人材育成)

ここ数年だろうか、施工の質が下がったと言われる。確かに感じることでもある。バブルが弾け、リーマンショックから新入社員が入らず、数年~十数年の次世代継承が途切れた。設計もそうだし、実際に施工する職人たちも年配の方が増えた。最近は若い人たちも少しだけ増えてきたが、これから育てるにも数年かかるし、有能な技術員たちもリタイアする。本当に建設業界あげて人を育てていかなければならない。

 建設業は経験産業と言われる。いかに失敗をして次は同じ失敗しないと念じながら仕事をしている。製造業はマニュアルがあり、工場という屋根の元、同じ条件で製造できれば、質の高い物が多く作れる。建築はプレハブでなければ、一品一品の製作物で、ここが技術者としての腕の見せ所である。ということは、会社としての土壌はあるとしても、そこに関与する技術者一人一人の経験や意識の高さが建築物の質を決めるといってもいい。

多くの人たちの時間を費やす建築物で、本当に恵まれた人員配置が施主としても望まれる。しかし、人がいないのです。経験豊富な、意識の高い人たち。少しは目をつむっても若い人たちを育てないといけません。私が若かったころはバブルが弾けてはいたが、まだストックとしてあったので近い年齢の先輩たちもおり、教えていただいた。何とか育てていただいた。これからは若い人を育てようと思っているが、我々の常識と若い人の常識の違いに、意図を伝えようとしても伝わらない。すぐ答えろ求める傾向にある。私の同僚の先輩が言った言葉に「俺は教えない。見て盗め!」と言われたのを思い出す。結局は自分で意識して考えないと、また同じこと(過ち)を繰り返すということだろう。道のりは長い。

建設業界もセオリーのようなものはあるが、マニュアルというものが少ないように感じる。私の新入社員のことは会社からマニュアルを何十冊ともらって都度見返したものだが、これはゼネコンにより無いところもある。これは一社に終身、勤めていたらわからない。派遣として複数社を経験した人しかわからない。会社としてマニュアルがなければ、会社としての共通したルールがなく、要は技術者個人の力量で、その建築物の完成が決まる。残念な所だと思う。施主としては「御社の技術マニュアルはありますか?」と尋ねてみるとよい。意識が高い技術員は、書店で数千、数万円する建設書を買って自分のものとしているはずだと思う。最近はネットで検索もありだが、ネット情報がすべて正しいとは言えない。最近の施主は自分で建築の勉強をして、色々と物言う施主もいるが、やはり餅は餅屋、しっかりと信頼できる建築技術を持った経験豊富な人(設計は建築士、施工は施工管理技士だろうか。同じ資格者でも得意とする分野があり、木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造等で注意を要するのだが)にアドバイスをもらうほうがよい。

~若い人を育てるとは、通常仕事をしていることに上乗せして人を教育するという心身ともに疲れることを感じて~